靴型は、靴の履きよさを決定するもっとも重要な要素であり、靴型ひとつで靴作りに対するこだわりが見えてきます。
銀座ヨシノヤのハイグレードパンプスは、長年にわたって蓄積された計測データを基に、踵の丸みやアーチのカーブなど複雑な足の形状を可能な限り再現した特別な靴型を使用しています。
靴型が複雑になればなるほど、その後の工程もさらに複雑になり、熟練の技術が必要になってきます。
素材の違いは仕上がりの美しさはもとより、履き心地の良さにも大きな違いをもたらします。
ハイグレードパンプスの甲革は主に、イタリアの一流のキッド(仔山羊革)を使用しています。
キッドの大きさは、本当に肌目の綺麗な小判サイズを指定しています。さらに熟練職人によって「肌目の細かさ」「色の均一性」、「傷」などを一枚一枚入念に検品し、上質な革だけを厳選しています。
小判のキッド一枚からはパンプス1~1.5足分しか取れず、肌目の微妙な違いが仕上がりに大きく影響するため、左右の肌目を揃える工程に多くの時間と手間隙を掛けています。
裏革には足あたりの良さと耐久性を兼ね備えた馬革を使用しています。
通常は縫製しやすくするために甲革と裏革をしっかり接着しますが、ハイグレードパンプスでは甲革と同じ厚さに薄くした裏革を最小限の接着に留めることで、しっとり柔らかく足に馴染む履き心地を実現しています。
踵芯は通常、成型作業の容易な合成樹脂のものを使用しますが、ハイグレードパンプスには昔ながらの一枚革の踵芯を使用しています。手間隙のかかる革素材を使用するのには大切な理由があります。
踵から土踏まずまで足をしっかりホールドする長めの踵芯を作るためには、弾力性に富み、足馴染みも良い革素材が最適です。
長時間履いても疲れにくく、いつまでも美しいシルエットを維持するのに必要不可欠な、縁の下の力持ちのような存在です。
縫製は靴全体の印象を大きく左右します。
ハイグレードパンプスでは、エレガントに仕上げる為に極限まで細かいステッチに拘っています。
この縫製技術は習得するまでに10年を要するほど高度であり、現在3名の選ばれた職人だけが技術を継承しています。
また、この細かいステッチに必要な細い針は市販されていない為、職人自らが針を細く研ぎ上げています。
釣り込みとは靴の仕上がりを決定づけるとても繊細な工程です。
靴型にぴったりと合わせるため、職人がその目と手の感触を頼りに、革一枚一枚の肌目と厚みを確認しながら最適な力加減で丁寧に仕上げていきます。
靴型底面の淵は丸みを帯びており、底付け部分のシワを成型していく技術は正に匠の技と言えます。
底材は見た目の美しさもさることながら、返りの良さ、通気性、軽さと履き心地にも優れている革底を使用しています。
底面に丸みを持たせる事で、美しく厚みを感じさせない様に仕上げています。
手作業で薄くした革底をヒールに沿って切り落としたマクリはもはや芸術の域に達しており、海外からも高い評価を受けています。