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2021.05.12

逆づりモカ

こんにちは、銀座ヨシノヤ銀座六丁目本店宮崎です。

今日は、逆づりモカの話。

見た目が似た靴はたくさんありますが、逆づりモカは非常に珍しいんです。

似た靴は、先にモカの部分を縫い合わせた後に靴型に入れて形を整えるものでツッコミなんて言い方をするそうですが、逆づりモカは木型の甲の部分で吊り込みをして、吊り込みの釘を抜きながら直接モカ部分を縫い合わせていきます。ツッコミとは木型との吸いつき(一体感)が違います。しかもモカ縫いの際にあたりを付けず直接縫い合わせていく技術は、手縫い靴全盛期に腕一本でメーカーを渡り歩いた渡り職人だからできる技です。手縫い靴工房でも80代のベテラン職人一人しかできない靴作りです。今のうちにこの技術で継承しようと頑張っています。全国でも逆づりモカを作れる職人はかなり少ないようです。残さなければいけない日本の手縫い靴文化のひとつだと思います。

ライトアングルステッチという高度なモカ縫いができる手縫い工房社長でも1足くらいなら作れそうだけど、24.027.0までロットで作ってと言われるとお手上げだそうです。素人からするとライトアングルステッチの方が難しそうに見えますが、地味に難易度が高い靴作りのようです。

写真の靴は高級手袋でも使われるペッカリーという革で作られています。ペッカリーは南米に生息するブタとイノシシの中間のような動物です。薄く丈夫で通気性・伸縮性に優れる素材ですが、部分によって革の伸び加減がかなり違うので、モカ縫いをする時の糸を引く力加減がかなり難しいそうです。サイドにシワを出さずに縫い合わせていくところも職人の腕なんです。

逆づりモカの特徴は、前半分に中底という硬い革がないため、軽く屈曲性に優れます。しかも靴の内側が袋状になっているので、足の包み込みがいいのです。ペッカリーに優しく包まれると考えると最高以外の言葉は見つかりませんね。昔、ベテランの販売員がよく「足に吸いつきます」なんて言っていましたが、まさにそんな感じです。今でもこの靴しか履かないというファンがいらっしゃいます。